失敗しない原価計算システムの選び方。3つのステップと「基本形の共有」
原価計算システムを選ぶ際、導入実績、機能数、価格、カスタマイズの可否などを比較することが多いでしょう。
しかし、これらを比較する前に、まず考えるべきことがあります。
「原価計算システムを導入して、何を実現したいのか?」
原価計算システムを選ぶときは、次の3つのステップで考えることが重要です。
1.目的を明らかにする
2.目的を実現するために必要な仕組みを整理する
3.自社のデータで試し、本当に使えるかを確認する
STEP 1 まず、原価計算システムを導入する目的を明らかにする
原価計算システムの導入目的は、大きく3つに分けて考えることができます。
① 月次決算を短縮したい
この場合の目的は、原価計算業務を効率化し、月次決算を早く終わらせることです。
そのためには、例えば次のような仕組みが必要になります。
• 全部原価計算、実際原価計算
• 会計システムへの仕訳データ連携
• 原価計算結果の確認
• 月内の原価異常の把握(異常値の自動抽出)
• 「なぜこの原価になったのか」を確認、説明できる仕組み
原価計算担当者の仕事は、月初に前月の原価を計算して数字を確定させることだけではありません。
月内に原価の異常を発見し、その原因を調べ、必要であれば原始データそのものを確認、修正する。
そうすることで、月次決算のスピードだけでなく、会社の数字そのものの精度を高めることができます。
これも原価計算担当者にとって重要な役割です。
また、決算資料を作成するための原価計算では、「なぜその原価になったのか」を説明できることが必要です。
経営者への説明はもちろん、監査対応の際にも、原価計算の根拠を追跡できることが求められます。
会社の仕組みとして、透明性の高い原価計算ができることが重要です。
② 経営改善に使える原価情報を作りたい
この場合は、「月次決算のための原価」を計算するだけでは十分ではありません。
例えば、次のような仕組みが必要になります。
• 全部原価計算だけでなく、直接原価計算にも対応する
• 標準原価計算と原価差額分析に対応する
• 製品別の売上、損益を把握する
• 経営ダッシュボードを作成する
例えば経営ダッシュボードでは、売上、原価、利益などの情報を、「全社 → 製品グループ → 製品」といった単位で確認でき、さらに日別・月別の推移や前年同月との比較などを簡単に行えることが求められます。
ここで重要なのは、
「原価を計算して月次決算を行うこと」と「原価情報を経営改善に使うこと」は同じではないということです。
経営改善に活用するためには、財務資料だけでは見えない情報を作成する必要があります。
詳しい会計知識がなくても、経営者が管理情報を見て、「これだ。この情報が欲しかった」と思えることが重要です。
また、マネジメントが必要とする情報は会社によって異なります。
そのため、管理情報を固定的なものとして用意するのではなく、マスタや各種設定によって、自社に合った情報を作成できる仕組みが求められます。
③ 月次決算の短縮と経営改善の両方を実現したい
「決算を早くしたい。しかし、せっかく原価計算をするのだから、その情報を経営にも活用したい」このような場合は、決算用と管理用で別々の仕組みを用意するのではなく、一つの原価計算基盤から、目的に応じた情報を作れるかがポイントになります。
例えば、
• 決算用と管理用の原価計算を一つのシステムで扱う
• 二重入力やExcelでの再集計を減らす
• 同じ原始データを基礎として、目的に応じた原価・利益情報を作成する
といった仕組みです。
「財管一致」という言葉があります。
この言葉から、財務会計と管理会計で同じ利益を出すことをイメージする方もいるかもしれません。
しかし、ここで重要なのは、必ずしも同じ計算結果を作ることではありません。
重要なのは、「同じ事実(原始データ)を基礎として、目的に応じて異なる原価・利益情報を作成できること」
です。
それこそが、決算にも経営改善にも原価情報を活用するための基盤になります。
STEP 2 目的を実現するために必要な仕組みを整理する
目的が明確になったら、次に「その目的を実現するために、どのような仕組みが必要なのか」を整理します。
ここで初めて、各システムの機能を比較します。
月次決算の短縮が目的なら、
• 原始データ(購入、入出庫、工数データなど)の入力
• 対応する原価計算(個別原価計算、総合原価計算、累加法、原価費目別累加法 など)
• 原価計算結果の表示(見やすさ)
• 異常値の把握
• 仕訳データの出力
• 原価計算の根拠を追跡できる仕組み
などが必要になります。
一方、経営改善が目的なら、
• 標準原価の作成
• 標準原価と実際原価の差額分析
• 直接原価計算
• 製品別の売上、損益、全社のキャッシュフロー
• 経営ダッシュボード
• 自社に合わせた管理項目の設定
などが必要になるでしょう。
このように、「どんな機能があるか」から考えるのではなく、「目的を実現するには何が必要か」から考えることが重要です。
STEP 3 自社のデータで試して、本当に使えるか確認する
ここまで整理したら、最後に必ず確認したいことがあります。
「本当に自社で使えるのか?」
原価計算システムの場合、資料やデモでの説明だけでは、この判断が難しいことがあります。
なぜなら、原価計算には、会社ごとに異なる原価計算ルールやマスタ構造、配賦ルールなどがあるからです。
そこで、次のような点を確認します。
• 今あるデータで原価計算ができるか
• 不足している情報は何か
• 不足情報はどのように作成すればよいか
• 必要なアウトプットを作成できるか
• 見やすさ、使いやすさはどうか
• 標準機能や設定でどこまで対応できるか
• 追加開発(カスタマイズ)が必要なのはどこか
これらを確認するには、対象システムに自社のデータを入れ、実際に原価計算をしてみることが最も確実です。
しかし、ここには大きなハードルがあります。
一般的な会計ソフトのように、「無料トライアル版をダウンロードして、自社データを入れればすぐ試せる」という原価計算システムは、決して多くありません。
そのため、多くの企業では、自社データでの検証を十分に行わないまま、ベンダーが用意したサンプルデータによるデモを見て導入を決めることがあります。
しかし、サンプルデータで問題なく動いたとしても、それだけでは自社で同じように使えるとは限りません。
実際に導入してから、
「この計算はできなかった」
「この情報を出すには追加開発が必要だった」
「思っていたような管理資料が作れなかった」
ということが分かる可能性があります。
だからこそ、完全な状態でなくても、自社の代表製品のデータを使って、「計算できるか」「どのようなアウトプットが作れるか」を確認することが重要です。
「基本形の共有」とは何か
ここで、私たちがシステム選定の段階で大切にしている「基本形の共有」という考え方をご紹介します。
基本形の共有とは、
「自社では、このデータを使って、このような原価計算を行い、このような情報を見たい」という基本的な形を、お客様とシステムベンダーで共有することです。
重要なのは、システムの機能一覧を見ながら、
「できます」
「できません」
と確認することだけではありません。
実際に自社のデータを使って計算し、どのような結果になるのかを確認することです。
例えば、
1.代表製品のデータを用意する
2.原価計算に必要なマスタやルールを整理する
3.実際に原価計算を行う
4.計算結果を確認する
5.標準機能、追加開発の範囲を整理する
という流れです。
この過程では、単にシステムの検証をしているだけではありません。
現在の業務や原価計算ルールそのものを整理することにもつながります。
場合によっては、「そもそも、この計算方法でよいのか?」という業務の見直しにつながることもあります。
私たちは、このようなシステム選定段階での共通理解を「基本形の共有」と呼んでいます。
原価計算システム選びで注意したいこと
最後に、システムを選定するときに注意したいポイントを整理します。
導入実績をうのみにしない
過去の導入事例や実績は参考になります。
しかし、他社で導入できたことが、そのまま自社でも使えることの証明になるわけではありません。
業種が同じでも、製品構成、原価計算ルール、管理方法などは会社によって異なります。
「他社で使えているか」だけでなく、「自社で使えるか」を確認することが重要です。
機能数だけで判断しない
機能が多いことが、必ずしも自社にとって良いとは限りません。
自社の目的に必要な機能が、実際の業務の中で確実に使えることの方が重要です。
「カスタマイズできます」を具体的に確認する
「カスタマイズできます」という説明だけではなく、「何が標準機能・設定でできて、どこからが追加開発になるのか」を事前に確認することが重要です。
例えば、画面に表示する項目の名称、列幅の変更、項目の追加などが、追加開発になるシステムもあります。
また、追加開発には費用だけでなく、開発期間も必要になります。
一方で、自社の用語での表示、自社の原価費目の分類、各費目の計算方法などは、自社に合った形にしたいところです。
これらが、
• 標準機能でできるのか
• 設定によって対応できるのか
• 追加開発が必要なのか
を、システム選定の段階で具体的に確認してください。
デモを見ただけで判断しない
デモでは、あらかじめ用意されたサンプルデータを使って、システムの機能や操作性を確認できます。
しかし、実際の導入では、自社特有のデータや原価計算ルールを扱います。
デモでシステムの機能を見ることだけではなく、自社のデータを使って、目的とする情報がつくれるか、実際にシステムを操作して、見やすさ、使いやすさはどうなのかを確認してください。
「基本形の共有」を、システム選定の段階から
弊社製品「製造業のための原価計算・管理会計専門システム ProSee(プロシー)」では、システム選定の段階で、お客様の代表製品のデータをお預かりし、実機で原価計算を行えるかを確認する「基本形の共有」を伴走サポートしています。
実際のデータを使って計算することで、
• どのような原価計算ができるのか
• どのようなアウトプットを作成できるのか
• 現在の業務や原価計算ルールにどのような整理が必要なのか
• 標準機能や設定でどこまで対応できるのか
• 追加開発が必要なのはどこなのか
を、導入前に具体的に確認できます。
「自社では、どのような原価計算を行い、どのような情報を見たいのか」、その基本形を一緒に整理し、貴社に合った原価計算の仕組みを検討していきます。
「製造業のための原価計算・管理会計専門システム ProSee(プロシー)」のご紹介ページはこちら
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